中学3年の夏休み、多くの塾で高校入試に向けた指導が本格化しますが、入試問題の中心である長文問題が読めなくて慌てる生徒が続出しているのをご存知ですか?

中学範囲の文法学習を塾の夏期講習で終え、県立高校の過去の入試問題や模試を受け始める生徒たちから聞こえてくる

「長文問題がわからない」「時間内に終わらない」

定期テストでは点数が取れていたのに、高校入試の模試で点数が取れなくなって戸惑う中学3年生の声です。

穴埋め式・並び替え問題や簡単なライティング中心の定期テストでは点数が取れていたのに、高校入試の模試で点数が取れなくなって英語の自信を無くす生徒たちが続出しているのです。そしてその原因の根っこは

「受験英語も急速に実用英語化している」

という事実にあります。

お盆明け、夏休み明けから耳にする「入試問題の長文が読めない・わからない」というSOSになんとか対応できないかという思いからこの記事を書いています。

長文をスラスラ読めないのはなぜ?テストが最後まで終わらない、高得点が取れない理由

まず結論からお話しします。

多くの中学生が高校入試問題の模試や過去問で時間が足りなくなり、点数が取れなくなる原因は「高校入試問題のTOEIC化」にあります。2021年1月付けの以下の記事では大学入試共通テストのTOEIC化を解説しました。このTOEIC化、つまり旧来の英文法の知識を問う問題や訳読に寄る読解ではなく、英語を使って生活し、仲間を作り、仕事をする際に必要な能力を測る試験への転換が、中学生対象の高校入試や実力テスト、そして定期テストのReading の問題にまで降りてきているのです。

皆さんが想像されている以上に今の高校入試や実力テストは激変しています。

  • 英語長文を訳さず理解できないと時間内に終わらない
  • 文法は知識よりも運用能力を問われる – 実際の入試では直接的に文法知識のみを問う問題は出題されない

という大学入試レベルの変化が県立高校の入試問題にも起きています。

この変化、元々「実用英語」を指導している私個人、そして私の教室に通ってくれている生徒、保護者にとっては実は大歓迎なのです。しかし、多くの生徒にとって「寝耳に水」になってしまっています。

「わからない!」「出来ない!」「終わらない!」というという多くの生徒たちの声は、

  • 英語を日本語を介さず英語を理解する
  • 様々な場面、状況に応じて英文法を運用する

といった学校や塾でトレーニングされていない技能を、入試で問われる現実からの当然の帰結なのです。

そう、「教わっていないから出来ない」んです。

以下の文部科学省の提言にもあるように、大学、高校入試という節目の試験が激変している、にもかかわらず、多くの生徒たちはそれに対応した指導を受けていないんですね。

改革3.高等学校・大学における英語力評価及び入学者選抜の改善

(1)現状と課題

○ 社会経済のグローバル化が急速に進展し、以前にも増して様々な分野で英語力が求められる時代になっており、実用的な英語力を身に付けることは、我が国の子供たちが各界で活躍する可能性を大きく広げるとともに、日本の国際競争力を高めていく上で重要な要素になっている。

大学入試英語の変化に関してはこちらの記事が参考になります。

英語で内容、論理を理解できるようにする英語学習

世界的には何十年も前から「聞いてわかる」「読んでわかる」「話して伝える」「書いて伝える」英語学習が一般的です。日本の従来の訳読中心の英語学習法が例外なのです。

今後は、英語の先生も以下の2種類に分かれていくと思われます。

・英語を聞いて内容をイメージ・理解できる先生

・訳読して英語を教える先生

英語の訳読が当たり前で英語を訳さず理解する経験がないと「英語を英語のまま理解する」状態をイメージできません。生徒にもいちいち日本語に訳させて「日本語に訳せるかどうか」で生徒の理解度を測ってしまいます。

この日本を一歩外に出たら常識ではないのです。

例えば:

不定詞の名詞用法 〜すること 

と教えて不定詞の名詞適用法の文章の箇所が出てくると「勉強すること」「テレビを見ること」と生徒に繰り返し訳させることは「英語を英語のまま理解する」トレーニングの妨げになります。

この訳読主義が身についてしまうと、英文を最初から一文一文、単語ごとに訳しながら読むことが習慣になり、実用英語のテストで要求される英文を俯瞰的に読むことが不可能になってしまいます。英語に最後まで苦しむ生徒が続出するのです。

夏休み明けに模試や過去問を解いて「英語がわからない。長すぎて何が書いてあるかわからない」と嘆く多くの生徒はこの訳読主義の習慣が身についてしまっているのですね。

訳読主義からの脱却: 入試レベルの難しい英文をひたすら解いてもスピードは上がらない

次回の記事では「英語を日本語を介さず英語で理解する」技術はどのように身につけるのか、その方法を公開します。訳読主義からの脱却ですね。日本の既存の受験参考書にはほとんど載っていない内容なので、出来るだけ噛み砕いて多くの方に理解していただけるように説明をさせていただきます。

以下の記事をご覧ください。

続きを読む:

「生徒」「保護者」そして「先生」へ。AI時代の英語指導、英語習得法の最適解を共有しています。
カテゴリー: 中学校英語