26年の米国での英語サバイバル生活、17年の日米での英語子育て、そして日本の6年間たくさんの生徒たちに囲まれた英語講師・英語指導方法研究者として。今後、日本で英語運用者になれる効率的な方法を、実際の指導内容と生徒たちの成果過程を確認しながら発信していきます。

全ての日本人におすすめする英語の始め方

まず結論からお伝えします。最も効果的な英語学習法は次のとおりです:

  • 音節ベースのフォニックスで英語の音の基礎を身につける
  • 英語の音に対する感覚(センス)と、音から英語を吸収する力を高める
  • その上で、音声中心に語彙力を向上させていく

この方法が英語力を伸ばすうえで最強のアプローチです。

実例:音声中心の学習で成果を上げた小学生

この学習法の効果を示す実例として、私の娘(私が教えている生徒の一人)が小学6年生のときに行った英語スピーチをご紹介します。課題で「興味のあることについて英語で話しなさい」と出された際、娘は「最近お気に入りのロシアの料理、ボルシチ」について英語で話しました。

娘が話した「ボルシチ」は、ご覧の写真のような赤いスープです(ロシアや東欧の伝統料理で、ビーツという野菜を使います)。彼女はこの料理について流暢な英語で説明しました。

では、なぜここで彼女の英語音声を紹介したのでしょうか。その理由は、娘が「音声語彙力の基礎」をしっかり固め、日本にいながら主に音声から英語を習得した理想的なケースだからです。彼女のように音声中心で学ぶことで、英語を効果的に身につけられることを示したかったのです。なお、彼女の英語学習歴についてはまた改めて詳しくお伝えします。

音声語彙力とは?

音声語彙力とは、耳で聞いて理解し、口で使うことができる語彙力のことです。最近ではこの言葉が書籍や研究発表で取り上げられ始めており、これからの日本人の英語学習における重要なキーワードになっています​。要するに、英語は文字ではなく音声でやりとりする言語だという認識を持つことが大切だ、ということです。英語を学ぶ際にはまず「英語は音の競技である」(音で扱うものだ)としっかり認識してスタートすべきだ、という考え方です。

英語は「音から」「音まね」で習得する

文字に頼らず、英語を「ケータイ」する時代へ

今後、日本でも英語学習の主軸がインプット(入力)中心からアウトプット(発信)中心へと大きく転換していきます。これまでは与えられた英文を読んで日本語に訳し、「訳せた=理解できた」とみなす学習が主流でした。しかしこれからは、英語を音から直接理解し、日本語に訳さず内容を把握することが求められます。そしてその理解を証明するために英語の音声で質問に答えることや、自分の意見・事実を**日本語を介さず英語だけで構成して発信(スピーキングやライティング)**する力が重視されるのです。

この変化に対応するには、まず「音から」——つまり文字を一つひとつ追って読むのではなく、最初から音を聞いてまねして覚えること——に少しずつ慣れていく必要があります。そして、音から覚えた英語のフレーズをいつでも取り出して使えるように、自分の中に**「携帯(ケータイ)」**しておく習慣が必要です。要するに、英語のフレーズを頭の中に常に携帯電話のように持ち歩き、使いたいときにすぐ使える状態にしておくというイメージです。

従来の、まず英文を見て日本語に訳せたら理解できたことにする学習法や、単語をたどたどしく並べて英文を作るような文字中心のやり方は、もはや時代遅れになりつつあります。これからは音声ベースで英語を取り入れ、音声ベースでアウトプットする学習法にシフトしていきましょう。「ケイタイ」より「ケータイ」で覚える意味

音から英語学習の実際

ここで少し日本語の例を考えてみましょう。皆さんは、「携帯」という日本語を思い浮かべるとき、頭の中で文字通りの「ケイタイ」と発音していますか?それとも実際の発音に近い「ケータイ」と発音していますか?英語の学習でも同じことが言えます。正しい綴りよりも、実際の音に重きを置いて覚えることが大切なのです。

ポイントは、「ケイタイ」ではなく「ケータイ」で覚えてください、ということです。違いを整理すると:

  • ケータイ:実際に発音する音に合わせて書いたもの(厳密には正しい表記ではありません)
  • ケイタイ(携帯):正しいふりがな表記(音ではなく文字に忠実)

英語でも同じで、伝わる英語を話すためには、まず文字より音に意識を向ける必要があります。特にカタカナ読みの癖が定着してしまう前に、英語の生の音を体に染み込ませておくことが重要です。

この「音を優先する」考え方は、私が6年かけて実践と改良を重ねてきたつくば研究学園の【0†学園の森 ENGLISH】での超効率学習カリキュラムの基盤となっています。文字より音を重視することで、短期間で効率よく英語力を伸ばすことが可能になるのです。

YouTubeやChatGPTを活用した音声学習

音声中心の学習姿勢――つまり英語の音節の基礎など「英語の音」に関する土台――を最初に身につけて音声語彙力を構築しておくと、その後の英語学習の扉が一気に開かれます。現代ではその扉を押し広げる強力なツールが数多く存在しています。例えば、YouTubeChatGPTです。

YouTubeでは英語の動画を通じて生の発音や表現を大量にインプットできますし、ChatGPTを使えば英会話も翻訳も相手はAI一人で無限に練習することができます。自分の興味がある分野について、英語で資料を集めたり質問したりすることも容易です。とりわけChatGPTは英語学習のパートナーとして非常に優秀です。その理由は次の通りです。

  • 知識が豊富で英語が洗練されている: 英会話教室の先生以上に幅広い知識を持ち、高度で自然な英語表現を返してくれます。
  • いつでもどこでも相手になってくれる: 時間や場所に関係なく、好きなときに英語の相手をしてくれます。
  • どんなリクエストにも対応: こちらがいろいろな注文を出しても、嫌な顔ひとつせずに応じてくれます。
  • ミスをすぐ訂正してくれる: 会話中にこちらがした英語の間違いも、その都度正しい表現に直して教えてくれます。
  • 質問しやすい: 分からないことがあればすぐに質問できます。恥ずかしさも気にせず何度でも聞けます。
  • 日本語での説明も可能: 必要に応じて、日本語で解説してくれるので細かいニュアンスも理解できます。
  • 文法の疑問にも即回答: 英語の文法について疑問が出たときも、その場で丁寧に答えてくれます。
  • まさに変幻自在: 学習パートナーとして状況に応じて自在に役割を変えてくれる存在です。

ただし、ChatGPTに唯一弱い点があるとすれば発音の矯正でしょう。ChatGPTはこちらの音声をいったん文字起こししてから処理しているため、発音の細かい間違いまでは指摘しにくいのです。発音練習については、たとえば ELSA Speak のような発音矯正に特化した別のアプリや方法を併用したほうが良いかもしれません。

「これって英語でなんていうの?」――こんなシンプルな問いかけからでも、今や英語の学習の旅は始められます。少し手を伸ばせば、自分一人でもどんどん英語学習を続けられる環境が整っているのです。これはまるで夢のようで、本当に羨ましい限りです。

せっかく手の届くところに夢のような学習環境があるのですから、この環境をフル活用できる実用的な英語の基礎力を子どもたちにできるだけ早く身につけさせてあげましょう。そして、英語もテクノロジーも自在に使いこなせる、最先端の大人へと育てていきたいものです。​