進学校の「受験英語」とTOEIC形式の新共通テストのギャップを埋める作業が必要

今回の大学入学共通テストで英語テストの内容が大幅に変更され、難解な構文を日本語訳していくような問題から、構文や語彙は易しく、リーディングは読む量が多く、そして配点はリスニング重視になりました。

今回の共通テストでのリーティングのような平易な文章を多く読む場合「英語を英語のまま理解する力」が必要、対して難解な構文は逐一日本語に訳す学習法になりがちです。

リスニングの配点が増え、リスニング重視になったことも、まず言語は音ありきというより実用的な方向への転換、旧来の使えない英語の暗記から、使える英語、つまりこれからのこどもたちが実際に「英語で生活、仕事をし、活躍するための英語運用能力向上」を目指す教育への大転換を強く印象づけるものとなりました。

日本の英語教育現場への wake-up call ととらえるべき

この大転換が学校、塾、英会話学校など日本の英語教育現場への wake-up call となることを切に願います。

こうした大きな変化が起こると我々、特に当事者である受験生、中高生、保護者、そして英語教育者は変化への不安からそれまでのものと比較して批判したり、細かな不備を指摘して、今までの慣れたやり方を擁護しがちです。

しかし、これまでの日本の英語教育が授業のコマ数を増やしたり、内容を微調整しても成果を上げられてこなかったことは事実。このことを真摯に受け止めて「これからのこどもたちが英語を難なく駆使し活躍する姿」をイメージしてそのサポートに全力を捧げるべきです。

我々が学園の森 ENGLISH で指導している「フォニックスからはじめる日本語を介さない英語のインプット・アウトプット習慣」をもっと広めたい、広めなくてはと決意を新たにしています。

同時に、これだけ大きな変更がありながら、事前にその変更が受験生や教育現場に周知されなかった、そして我々も英語を教える立場であまり多くの方にこの変更に対する対策をお伝えるできなかったという一種の悔しさ、フラストレーションを感じています。

実際の問題を解いてみて

帰国子女の中一の息子と実際の問題を解いてみたところ、結果は2人とも1問間違い。時間はリーティングに関しては15分ほど余りました。

(ちなみに以下の動画で議論になっている問題を間違えました。)

内容は試行問題などを見て予想していた通り TOEIC にかなり近い、日常生活、学生生活などでサバイバルしていくのに必要な英語力、英語の運用能力を問う試験になっていました。 問題を解きながら、旧来の学習法 (単語帳・文法書中心、そしてセンターや各大学の過去問中心の学習)を試験前日まで続けて、実際のテスト問題を目の前にして、要求されているスキルの余りにも大きな違いに戸惑う多くの受験生の姿が頭に浮かびました。

例えば、予備校や有名講師が配信されてきた共通テスト対策の Youtube 動画などでも「単語帳を何度も繰り返せ」「この参考書を完璧にしろ」など、旧来型の受験勉強の枠内での指導が多く見受けられました。それらの指導に従った生徒たちはショックを受けているのではないでしょうか。

日本の「受験英語」の特殊性

ただ、ここで一度足を止めて考えてみてください。今までの「受験英語」こそが特殊だったのではないでしょうか。今回の変更で、今までの難解な、そしてまず使うことのない言い回しなどの日本語訳を問う独自の、そして内輪の競争から、開かれた世界でこれからのこどもたちが様々なバックグラウンドを持った人々と協業する際に必要な「基礎」を問う試験に変わったのです。

このサイトのトップページで「バスケ初心者がいきなりマイケルジョーダンやステファンカリーの真似をしても上達しない。」と書きましたが、受験勉強としての英語はプレーヤーとしての基礎が無いままに高度な技術を自己流で真似をする、あるいはそのプレーの解説を覚えるような作業でした。プレーすることが前提でないので、実際にプレーできなくても「こんなルールもあるよ。こんなプレーもあるよ。知ってる?」と高度でマニアックな内容を知識として覚えることに重きを置いてきたのではないでしょうか。

これからは実際にプレーすることが求められます

一流のプレーヤー・運用者になりたいなら上級者を真似する前に、基本練習を徹底して「自動化」するまで繰り返すことが必要です。

  • 英語の音で発音できる
  • 聞ける
  • 日本語を介さず英語のまま意味が取れる
  • 文法的に間違いの無い文章が書ける

ことを簡単な文章から徐々にレベルを上げていく積み上げが、実践で活躍できるプレーヤーになる唯一の方法です。

今回の共通テストでの変更で、日本の学校、教育現場での英語学習が「受験英語」対策ではなく、より実用的な英語のプレーヤーの育成に向かっていくことを切に願います。

英語運用者(プレーヤー)になるための要件

実用的な英語運用能力をつけていく、そして今回の共通テストや TOEIC で高得点を上げられるような力をつけるには、リーティング、リスニング共に、

  • 英文を英語の音で発音する
  • 英文を読んで・聞いて即座に内容をイメージする
  • 直訳でなく発言の意図をしっかり汲み取って情報を整理する

を英語の語順のまま行う練習が必要です。それにはまず発音、そして内容をイメージすることを簡単な英文から徐々にレベルアップさせて正しい発音で読んでいくことを「習慣化」することです。

例えば、ニューヨーク市の公立学校の場合、こどもたちは年長さんから、「毎日30分の読書が先生との約束事、皆がする毎日の課題です。そのために学校でブックフェアが開かれたり、オンラインの多読教材なども充実してきました。学園の森 ENGLISH で教材として使用している Raz-Kids もその中の1つです。

そしてフォニックスは年中さんから小学校2年生まで約4年間もの間学校で習います。つまり、

  • フォニックスでの基礎を固め
  • 徐々にレベルアップする多読での学習英語、自立学習の根幹となる「読む力」養成

を小学校低学年のうちに徹底することが教育現場で根付いています。このやり方を英語学習を本格的にスタートする日本のこどもたちに広めたいのです。

話を戻します。何度も繰り返しますが、基本を固めてスタートすることが大切。基礎を抜きに始めてしまった方も一旦立ち返って基礎からやりましょう。そして「英語が英語のままわかる」感覚を身につけましょう。

「英語が英語のままわかる」感覚を身につけたい方、実践方法に興味を持たれた方、ご遠慮なくご連絡ください。 これからのこどもたちの英語を一緒に支えていきましょう。

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